香耶子とジンギスカン

金沢に行きたい。だが、その前に金沢で苦悩中の放送作家に起死回生の脚本を書かせなければ。う~ん・・・。そのとき、携帯にメールが届いた。『柴田さんってジンギスカンの美味しいお店はご存知?』香耶子からだった。『もちろーん、知ってるよ~』と返す。香耶子は「おひとりさま」でがっつりとした食事をすることが多く、時々、このように、誘いなのか単に教えて欲しいだけか不明なメールが送られて来る。それでもまあ、何もないよりはずっとましだ。何もないよりはあった方がマシ。そういえば、キョウコもそんな感覚の持ち主だった。それが新しい彼氏にあれだけペースを乱されているのだから、多分、カズシとかいうオトコはいい男なのだろう。与えられる恋愛から、求めていく恋愛に遅咲きながら目覚めたキョウコに複雑な気持ちを抱いてはいるが、どちらかといえば祝福を送りたい気がした。まあそれは、さっきの香耶子からのメールで心に余裕が芽生えたから思えることなのだろう。香耶子との待ち合わせ時間まであと2時間半。それまでにこの冴えない放送作家に明るい未来を用意してやれるだろうか。何しろ、本筋とは関係のない、ストーリーの中のストーリーなのだ。変に気合を入れて書くことではないのは分っている。だが、テンションを抑えたストーリーにもそれなりの風合いや、存在感はあったほうがいい。目の前のジンギスカンか、どこまで求められているか分らない仕事のクオリティにこだわるか。ユキオは今、小さな帰路に立っているのかもしれない。何がきっかけで人生が好転するか分かったものではない。空を見上げると、旋回中のヘリが小さな点になり、六本木ヒルズの彼方へと消えていった。

広告

金幸笠井商店
北海道ギフト、サッポロクラシックの通販なら金幸
名古屋の情報を探すならしゃちナビ
名古屋市や名古屋市近郊の情報が満載。
Posted in 小説 | Tagged | Leave a comment